軟口蓋過長症

2019年06月14日

軟口蓋過長。パグさんやフレブルさん、チワワさんなど短頭種犬で良く見かける呼吸がブーブー、ガーガー鳴るもっとも大きな主要因です。

上顎の粘膜、硬口蓋から喉の奥に行くと軟口蓋という部位になります。人間で言うと上顎を前歯から奥の方を触っていくと硬い骨が無くなり、柔らかい組織になるところ、口蓋垂のあるあたりになります。

短頭種の場合、この軟口蓋が長い事で気道の開口部を塞いだり気道内に引き込まれることで、軟口蓋が震え、あの呼吸音を発生します。気道の入り口を塞ぐわけですから、換気効率は悪くなり、より頑張って呼吸をするようになります。すると熱が発生し、その結果体温上昇。人間であれば発汗作用で体温を下げますが、犬ではパンティングで体温を下げようとしますが、換気効率が悪いためさらに呼吸を頑張る。でも効率が悪いためうまく体温が下がらない。。。という負のスパイラルに陥るわけです。その結果、最終的には熱中症となり命の危険に晒されてしまいます。

 

 

 

 

 

 

 

さらにパグさん達は鼻の穴が狭いため、さらに呼吸の効率が悪くなる追加要因となります。

以前にブログでも書いていますが、これは普段の生活に大きな影響が出るだけでなく、麻酔時に於いてもとても大きなリスク因子となります。麻酔導入時&覚醒時に窒息を起こすケースがとても多く、「短頭種の麻酔は危ない」の最たる原因と感じています。

当院では短頭種犬において、麻酔処置を行う場合は軟口蓋切除&鼻孔拡張術を同時に行う可能性が十分にあるという旨を説明し、切除&拡張を行う判断を任せていただくようにしています。

当院はレーザーを導入していることもあり、切除はとても安全に短時間に行えます。ただこの処置の難しいところは切りすぎると誤嚥のリスクがあるため、加減が肝になります。また、短頭種は大概口が大きく開かないため、口の奥の本処置は慣れや技術の引出しが必要なこともあります。従ってある程度の経験や技量が器具の他に求められています。

 

 

 

 

 

 

 

 

処置を行ったあとの飼い主様の満足度はとても高く、呼吸がとても楽そうである、夏場の暑さに対して耐性が上がった、咳込みやむせるなどが減ったなどやって良かったというお話が出ます。中には夏に向けてこれらの処置を行ってくれという単独の依頼もあります。短頭種=夏は危ないという情報が浸透してきていますが、ならどうするの?というところも必要な情報です。早めのクーラーや首元を冷やすといった事だけでなく、多少の侵襲性は伴いますが、ある程度根本的な解決が期待できる本処置の有効性は高いと考えています。

 

 

 

 

 

先日も超肥満&軟口蓋過長&鼻孔狭窄で常に呼吸音が大きく、時折窒息しかけているという子の避妊手術がありました。とてもハイリスクでしたので、術前から十分な酸素化など最大限の準備をしましたが、それでも麻酔導入時にチアノーゼ発生。挿管後は即座に回復しましたが、抜管時に同様な事が起こると危ないので処置を行いました。術後はとても良好で、満足度もとても高く、快適な夏を過ごせるのではないかと思います。この子の他にも最近連続しています。しかも他の手術のついでという具合です。

これから迎える暑い夏。短頭種と生活されている方達には是非知っていただきたい情報だと思います。