胆泥

2018年03月23日

「胆泥」、胆嚢内の胆汁の粘性が上がりゼリー状・砂状などの様になっている状態です。

エコー機器の発達により確認される事が増えてきており、指摘された事のある子も多いのではないでしょうか?

臨床的意義は様々なものがあります。健常でも認める事があり、なにか他に原発疾患があって起こることもあります。すなわち胆泥自体が常に治療対象になるというわけでは無く、胆泥が存在する事で胆汁うっ滞から肝実質への障害が起こったり、黄疸を起こしたり、感染を悪化させたりする場合には治療をする必要があるという事です。また、胆泥が発生するには内分泌疾患や胆嚢炎・胆管炎などが潜んでいることもあるので、こちらも併せて留意する必要があります。

臨床的に悪い場合には胆汁うっ滞に起因する肝炎や胆嚢炎や胆管炎に付随している事が多く、食欲不振や嘔吐、黄疸などを来たす事があります。時に胆汁性腹膜炎や膵炎などの全身性の炎症を引き起こすこともあり、危険なこともあります。

胆泥によって隣接している肝臓に炎症が起こり、それが続くと慢性的な肝炎となり肝萎縮が起こることもあり、胆泥の存在する胆嚢に対しての治療を行う場合はなるべく早期にすることが術後の回復も早いとされています。

先日、突然の肝酵素の上昇が止まらず、顕著な胆泥が存在した子に対してかなり迅速に摘出手術を行いましたが、既に肝臓の一部は萎縮し胆嚢に癒着しているような状態でした。本来は透明でサラサラな胆汁もキャビアの様に濃縮し、胆嚢壁も肥厚していました。

恐らくは何らかの原因で出来た胆泥によって胆汁うっ滞が起こり、肝炎が発生し肝臓の萎縮が起こっていたのだと思われますが、これらは慢性的に存在していたのでしょう。この様なケースを見ると胆泥がある時点で既に肝炎や肝萎縮が進行していて、のんびり経過を見ないほうが良い事も少なくないんだろうなと思います。

この子は皮膚糸状菌症も併発しており、肝酵素が高い事が足かせでしたが、安定すれば効率的な治療も平行できるでしょう。

症状が進行した胆嚢の手術はハイリスクなこともあり、緊急にも関わらず手を出せないこともあります。全ての胆泥について積極的に治療を開始する事はないと考えますが、時期を逸さないことはとても大切です。消化器症状を繰り返しやすい・腹痛を認めるなどのプラスαがある場合は注意が必要かもしれません。