皮膚のバイオプシー

2016年02月23日

今日は久々に皮膚のお話を。

「皮膚生検(バイオプシー)」、、、聞き慣れない言葉かも知れません。これは皮膚科診療に於いてとても大切な検査です。問題となっている皮膚の一部を切除・採取をして病理検査を実施して診断・治療方針を組み立てて行く検査です。これを行うことで、表面的な部分しか分からなかったものが色々と分かってきます。具体的な診断名が出なくても病理組織の所見からどのような病態なのか?どのような治療方針が良さそうなのか?といったことも分かり、皮膚科診療では最後の砦の様な検査と言えます。

メリットはやはり得られる情報量が圧倒的であることです。感染症なのか?免疫疾患なのか?火傷なのか?本当に限りなく診断に近いような情報が沢山得られます。

デメリットは費用や侵襲性の問題です。ちなみに侵襲性は大体は6〜8mmのパンチメスで採材し、1〜2糸の縫合を3ヶ所ほど行います。一つ一つは大した傷ではないので、部位によっては局所麻酔で無痛で実施可能です。ただ、皮膚検査の中では侵襲性は高いと言えます。

これらをよく吟味して、本当に行うべきか?などを検討して診断の一助としていきます。どの皮膚病でもやればいいのか?といえばそうでもありません。必要ないこともあれば、鑑別などをきちんとしていないと逆に迷宮入りすることすらありえます。

今回はそんなバイオプシーがとても有効だったケースをご紹介。

Wコーギーの子。年齢は高齢。真菌症と皮膚科専門の2次診療施設において診断・治療を展開しているものの改善しないとのことでした。

皮疹としては頚部の脱毛と赤みと局面でした。たしかに所見としては真菌症を疑う部分もあるものの、きちんとした治療が展開出来ているにもかかわらず反応が全く無い模様。真菌症は治療にとても時間がかかりますが、半年以上と明らかに時間が掛かり過ぎています。

飼い主様には皮膚の所見から真菌症以外も疑う必要があるということと、その鑑別の中には命に関わることもある疾患もリストに入っていることをお伝えし、侵襲性はあるもののバイオプシーが適応であるとお話をさせていただきました。高齢の子の麻酔ということで躊躇はありましたが、最終的には実施することになりました。

バイオプシーは全身麻酔下で行い、無事に覚醒し終了しました。

診断としては真菌症は否定され、真菌症の結果引き起こされたと考えられる免疫の絡んだ皮膚炎でした。これはバイオプシーをしないと絶対に診断が出来ない病態であり、また、治療方針もしっかりと自信をもって展開することができました。

治療プランを再構築して経過を追っていますが、とても順調です。完全に被毛が戻るかはもう少し経過が必要ですが、とても期待できる途中経過です。