子犬や子猫を招き入れるにあたって

2015年07月03日

最近は天候が優れませんね。

さて、先日ブログで話題になっていた入院のトイプーちゃん。先日、何とか状態が上向き無事に退院させることが出来ました!この子は重度の下痢、低アルブミン・低血糖・SIRSを呈し、夜間救急で緊急対応。そこでは呼吸が一旦停止し、何とかリカバリーしたものの、治療が継続的に必要とのこと。

来院時には既にグッタリで意識ほぼ無し。体温も低下気味。DICという大変恐い状態への移行が今にも起こりそうな状態で、きちんとした治療を展開しても生かせられるかどうか?という状態。何故このような状態にまでなってしまうのか?この子は

・コクシジウムの濃厚感染
・耳ダニの大量寄生
・ケンネルコフ

という感染症のオンパレードという状態でした。それぞれが単独で罹患している子犬はよく居ますが、全てをしかも重度な状態で罹患している子はとても珍しいケースです。これらは多頭飼育されている環境で、適切な管理をされていないと蔓延する感染症です。恐らくは購入元のブリーダーで蔓延しており、そこでもらってきたのでしょう。実際、来家直後から元気や食欲はそこそこあったものの重度の下痢を呈していた模様。簡単な支持療法では状態が上向かず、この状況になってしまった感じです。尤も、ここまでの状況の子を多少元気だからと言って売り渡してしまうのは言語同断ですね。

終いにはこのブリーダーさん、オーナーさんがコクシジウムなどの状況を説明すると、具合が悪いのはコクシジウムを駆虫する薬の副作用だ、これを続けたら死にますよ?ウチにはそんな感染症は無い!などと言い、あまりにも対応が不誠実かつ非論理的。。。腸炎の元になっているコクシジウムを駆虫しないと始まらないし、そのような副作用はありません。。。オーナーさんも不信感から途中から弁護士さんを介しての対応にしたようでした。

しかし、そんな話をしたところでワンコが治る訳ではありません。オーナーさんに状態の厳しさや改善の見込などを客観的にお伝えし、方針を決定しなければなりません。オーナーさんからは「何とかこの子を治したい、やれることがあるなら全部やってくれ」というお話でしたので、治療を全力でさせてもらうことになりました。詳しくは別のお話になるので割愛。10日程度の治療の結果、無事に退院が出来た次第です。この間、オーナーさんは毎日の様に面会にいらっしゃって声をかけ続けてくださいました。また、毎日神社にお参りまでしてくれたよう!退院後の再診でも様々な異常箇所も改善してきており、混合ワクチンの接種までも予定が立ちました!

今回の治療費は結局全てブリーダーさん持ちになるようで、責任の所在も含めてこちらも一件落着のようです。この子は無事に治療できましたが、そこのブリーダーさんのところには恐らくこれらの感染症を持った個体がいるはずです。その子たちが不幸にならないように願うばかりです。また、このブリーダーさんには大いに改善してもらいたいとも思います。

長くなりましたが、今回お伝えしたい事は、

・子犬や子猫を迎え入れるには、きちんとした所から迎え入れましょう。

・感染症を持っている状態で譲渡することは言語道断であるが、検査をきちんと行っていても発見されないケースもあるので、そのリスクは理解しておきましょう。

・万が一の際の対応は誰がどこまで責任を持つのか?を前もって確認しておきましょう。(そういう事がきちんと話せるだけの信頼関係を築けたり制度を設けている所がきちんとした所だと思います)

・ブリーダーだから安心は有り得ない。良いブリーダーさんもいれば今回の様なブリーダーさんも多くいる。これはぱっと見では分からない。ペットショップも同様。我々獣医師の医療についても言えることかもしれません。。。戒めになります。

・ブリーダーさんや自称「犬に詳しい人」にとても豊富な知識を持った素晴らしい人が多いなかで、数少ない経験則や誤った知識を素人の方に吹き込む方も居ます。善意で言っているのでしょうが、その結果治療が後手に回ったりしてもその人は責任をとりません。ここが我々獣医師との大きな違いです。それなら最初から相談できる獣医さんを探しておいたほうが良いです。国家資格は伊達ではありません。

先日、東京都の動物取扱責任者の講習会でもこのような案件のトラブルがとても多い。売る側の責任や問題が起きないようにはどうするか?起きたらどうするべきか?などを弁護士の先生がお話していました。当然、生き物ですから家電を買うのとは訳が違いますし、不良品だから返品なんてドライになりきれない部分も多々ありますから難しい問題です。しかしなるべくそのリスクを減らしたり、悪い業者が減るためには子犬や子猫を招き入れるにあたって、飼い主になる人の知識や意識の向上が不可欠です。長い付き合いになるペットさんですから、どの犬種にするか?この子が可愛い!なども大事ですが、どこから招き入れるか?も大事な要素と考えてみてください。