毛包虫症

2015年03月28日

今週末からかなり暖かくなるようで、嬉しい気持ちになりますね。狂犬病やフィラリアの予防が始まりますので、忘れずに動物病院で予防接種や検査、お薬の処方をうけてあげましょう。

さて、先日の症例。

他院にて真菌症と診断され、来院したSちゃん。右飛節あたりを激しくなめており、治療にあまり反応していないようだとのこと。真菌症であれば人への感染なども起こりうるため、注意が必要な疾患です。しかし、他院で処方された薬は抗生物質(抗真菌薬ではない)と保湿系シャンプーなのは何故だろう。。。

治療への反応が乏しいようなので真菌症を含め、その他鑑別に上がるものも考慮し、皮膚検査を一通り実施。すると毛包虫が大量に検出されました。虫卵や若虫も検出されています。そのため、今回は毛包虫症による皮膚症状であると判断し、駆虫薬を用いた治療を開始しました。駆虫薬はフィラリアの駆虫薬と同系統のお薬を用いて行いますが、毛包虫症の治療で用いる用量の場合、その子によっては薬の影響でフラつきなどがでることもあります。そのため、飼い主様にはその旨をお伝えして治療を開始しました。順調であれば2〜3ヶ月程度の治療で良くなってくれるはずです。

毛包虫症は別名、ニキビダニやアカラスと呼ばれるDemodex属に属する毛穴や体表に生息するダニの増殖によって毛根等がダメージを受けて起こる皮膚疾患です。元々、母犬との授乳などによる接触により伝染し、ほぼすべての犬はこのダニを保有しています。また、人には人の毛包虫が存在し、犬のそれとは別物で犬の毛包虫が人へ伝播することはありません。また逆もしかりです。元々ほぼすべての犬が保有しているので、毛包虫症を発症した子が他の子の感染源になることもありません。

ダニの増殖による毛包虫症の発症のトリガーは具体的には分かっておらず、ざっくり言うと皮膚の抵抗力の落ちる要因(基礎疾患の有無、年齢、犬種、投薬など)があると発症しやすくなると言われています。おおまかに分けると若齢型と成犬型、局所型/全身性に分けて考えますが、前者の場合は基本的な治療のみでほぼ完治すると言われています。また、場合によっては無治療で治るケースもあります。一方、後者の場合は、何か基礎疾患(腫瘍や内分泌疾患など)を持っている、投薬を行っているなどの要因があって発症しているケースが多く、要因となる基礎疾患の探索や投薬歴の聴取が大切になります。そして、毛包虫症のみの治療での反応は鈍いことが多く、基礎疾患も同時に治療しないとコントロールが不良になることもあります。

今回のケースは若齢の子で局所型の毛包虫症のため、きちんとした治療で十分反応することが期待されます。念のため、他院で診断された真菌症についても念のため培養検査を実施しており、そちらの結果が問題なければ投薬すること以外は普通通りの生活が送れることになります。

皮膚疾患は見た目で診断を付けることは難しいです。当然、皮疹を沢山みることで当たりをつけることは可能ですが、最終的な診断には検査が必要です。今回はたしかに真菌症も鑑別に入る皮疹ではありますが、毛包虫なども鑑別に入るものでした。真菌症であれば隔離等も含めて治療法がありますし、毛包虫症は毛包虫症の治療があります。対応が大きく変わるため、きちんとした検査や診断の必要性が示されたケースだと思います。

あとは治療に反応して、早く通院が終わるようになるといいですね。