飼い主のいない猫の不妊・去勢手術費助成(いわゆる野良猫の手術助成金)について

2019年07月26日

目黒区の保健衛生対策として「飼い主のいない猫の不妊・去勢手術費助成」があります。

とても大事な助成だと思いますし、野良猫・地域猫の問題を考える上ではとても良い機会とも言えます。

要は野良猫さんの数が増えてしまい、糞や尿のトラブル、病気の蔓延が起こることを防ぎましょうということですね。で、ここで大切なのがこの助成の対象は?という事です。

額面にある通り、「飼い主のいない猫さん」これが対象です。一応区内に住んでいる方が申請可能で区内に生息する野良猫さんが対象であることは言わずもがなです。

そこで考えるのは「飼い主」の定義は?という事です。ここからは私個人の考えになります。

「飼い主」というものをある程度はっきりさせておくことが大切と考えています。最近は減りましたが、依然として「エサやりをしているが、自分は飼い主では無い」、「わたしは寝床を与えているだけ」などのケースがあります。価値観は人それぞれですが、個人の意見としてはいかがなものかな?と思います。飼うということは衣食住(猫さんなので衣は無いかもですが。。。)を提供することだと考えていますので、食事・寝床を与える事は飼うことと同義だと思います。住み着いちゃったとかは別ですが、積極的に食事を与えるなど能動的な事をすることは飼っていることと何が違うのでしょうか?

確かに、お腹を空かせた子をみすみす無視するのか?かわいそうじゃないか?というご意見もでると思います。本当にそのとおりだと思いますが、そう思うのであれば尚更きちんとした飼い方をしてあげるべきだと思います。ご飯を与え、寝床を与え、安全な屋内で飼い、予防をしっかりと行うなど。。。きちんと人間の手で、保護の下で守ってあげてほしいと思います。様々な状況でそれは出来ないということもあるかもしれません、それならもう仕方ないのではないでしょうか?それは面倒見きれないということなので静観したほうが良いのではないかと思います。

野良猫さんは自然界の存在です。人間と近い距離ではありますが、例えるならアフリカのシマウマさんや北極のシロクマさんと同じだと思います。シマウマさんは弱肉強食の世界においては食べられる側です。北極のシロクマさんは耐え難い飢えに苦しんでいます。その中で生き抜いています。温暖化や色々な人間の活動のせいで被害が出ていることは一旦置いといて、自然界って可哀想では済まされない厳しさがあります。と同時に人が介入するということはとても責任があることです。極論かもしれませんが、野良猫さんにご飯を与えることは、食べられそうになっているシマウマさんを守りに行くこと、餓死しそうなシロクマさんにエサを与えることと同じです。その子のその時は守れるし、決して悪いことではありませんが、中途半端な介入は自己満足に過ぎないこともあるのではないかと感じるときもあります。

話は飛躍しましたが、野良猫さんの手術において、当院のはっきりとしたスタンスを明示しておこうと思います。

①野良猫さんの手術の場合、当院では術前検査などは行わずそのまま麻酔をかけて手術に臨みます。術後は耳カットを行い、オスメス問わず日帰りでの手術になります。胎児がいる場合は霊園への供養を行いますのでその分実費が掛かります。術後は抜糸が不要な状態でお返ししますので、帰宅後はそのまま元の生活に戻って頂いてOKとなります。そのかわり費用は正規料金より安価に行います。文字通り本当に手術のみ行いますという感じになります。その場合は必ずキャリー&洗濯ネットか保護用のオリに入れて連れてきていただきます。

②野良猫さん=特定の飼い主がいないということですので、エサやりをしている、積極的に寝床を与えている(住み着いちゃったは別です)、そのどちらかを行っていればそれは飼い主がいる猫と判断します。飼い主はそれを行っている人。その場合は普通の猫さんと同じように術前検査などの対応をしていきます。正規料金を飼い主の方に請求します。この場合も必ずキャリー&洗濯ネットか保護用のオリに入れて連れて来て頂きます。

③どちらも完全予約での受け入れになりますので、日程が確定してからのご連絡&ご予約をお願いしています。

地域貢献などから積極的に対応したい、すべき事ですが、ある程度の裁量は各病院に委ねられています。予防のお話と似ていますが、自分だけ良ければということは無く、一定のルールやモラルなどに則った上で行うことが必要かなと思います。中には不便に感じられる方もいると思います。重々承知ではありますが、自分の技術や知識は正しく、自分の信念に従って奮っていきたいと思っています。皆様のご理解やご協力を頂けることを切に願います。