猫さんの尿管結石・閉塞

2024年01月15日

能登半島地震でお亡くなりになられた方々へ謹んでお悔やみ申し上げますと共に、被災された方達へお見舞い申し上げます。

早いもので1月も折り返しになりました。当院は年末年始のバタバタが過ぎ、少し一段落ついた状態になりました。

今年も地域の皆様に来てよかった、あってよかったと思っていただけるように精一杯頑張って参る所存です。

さて、寒い時期になると増えるのが泌尿器疾患。結石などによる膀胱炎や尿路閉塞のトラブルが増えてくる時期と言われています。

特に尿路閉塞のトラブルは対応が遅れると致命的になると共に、時には外科介入が必要となることも少なくありません。

最近増えているなと感じているのは尿管閉塞によるトラブルです。エコー機器や診断精度の上昇により偶発的なケース含めて診断されることが多くなっています。

個人的な体感としてはニャンコ>ワンコの発生率です。体の大きさ、尿管の太さ、尿の性状などが違いに反映されているのだと思っています。

今回は猫の尿管結石・閉塞について書いてみようと思います。

まず、猫の尿の経路としては、腎臓〜尿管〜膀胱〜尿道〜体外へ排出というルートです。人や犬も同じです。

左右の腎臓で血液を濾し取り、そこで作られた尿はそれぞれ左右の尿管を通り、膀胱に集められ、貯められます。

その尿管で何かしらの原因で閉塞が起こると尿が流れていかず、上流の腎臓に溜まっていき尿管が拡張し、さらに進行すれば腎臓が腫れる水腎という状態になります。結果として尿管炎や腎盂腎炎となり、強い痛みや腎機能障害を起こすようになります。

猫でよく稟告で得られる症状やお話はとても多岐に渡りますが、多い傾向としては急にうずくまる、元気が無くなる、嘔吐、血尿です。強い痛みや腎機能障害に伴う症状だと思われます。あまり多飲多尿の稟告を得ることは少ない印象です。ただ厄介なのはあまり症状が無い場合です。習性上、動物さんは症状を隠す傾向があることや、腎臓は左右あるため片側に問題が起きても反対側が代償するため、あまり変化が出ない場合もあります。中には膀胱炎症状で来院したけれど、エコー検査をしたら尿管閉塞が起きていたなんてこともありました。その子は頻尿以外一般状態良好という稟告で、上記の症状に全く該当しないケースでした。検診で偶発的に見つかったこともありました。

閉塞の原因は結石(ほぼシュウ酸Ca結石)、血餅や赤血球膜の遺残物、結石通過後などで肥厚や線維化が起こる結果の狭窄などが挙げられます。結石なら判り易いのですが、厄介なのはそれ以外の場合です。エコーやレントゲンでは見つけられないことも多く、尿管の拡張の有無やCTで結石をより正確に判断する、その他疾患の除外する、などで間接的に診断する必要があります。時には内科治療を行い、その反応で診断する場合もあります。背景には猫の尿管は1−2ミリ程度のとても細い管であることが挙げられます。結果、簡単に狭窄・閉塞が起こるのです。

治療は幾つかのプランを、状況により判断していきます。

状態が悪くすぐに手術出来ない場合は、腎臓に管を入れる腎瘻カテーテルを設置し、そこから尿を抜去し、状態の改善を待って手術に臨みます。

術式は尿管切開ならびに結石摘出、尿管吻合、尿管バイパス形成術(SUBシステム)、尿管ステント設置術などがあります。どれを選択するかはその子の状況やコストなどで総合的に判断していきます。当院はステント以外は対応しています。時には術中の所見などで方針を変更・再決定することもあります。

内科治療の反応はあまり良くは無いとされていますし、自分の印象としても上手く反応すればラッキーくらいに考えています。その子が頑張れそうである事、飼い主様が内科に反応しなかった場合のリスクをしっかりと承知できるなら、手術までの期間、内科治療を行うこともあります。そこまでに閉塞が解除になればラッキー、駄目なら手術という具合です。

とはいえ、なるべくなら、診断できたらできるだけ早く閉塞を解除したほうが良いと思います。その方が腎臓は守られます。経過が長くなると腎臓は萎縮し、不可逆的な機能不全を起こしてしまうからです。

結構あるのが、知らぬ間に片方の尿管閉塞が起きていて、そっちの腎臓が既に萎縮し、もう片方の腎臓だけで頑張っていたが、そちらもいよいよ尿管閉塞したという場合です。この場合は急激に状態が悪化し、更に、とてもコンディションが悪くなり緊急性が高くなります。この場合、手術するには状態が悪くリスクが大きいにも関わらず、閉塞を解除しないと状態が良化しないというジレンマに陥ります。その場合は、先に述べたとおり、緊急回避的に腎瘻を設置して状態を安定させてから手術に臨む事にしています。

頑張って手術を乗り越えられたら、術後は結石の再発生を気を付けながらフォローアップをしていきます。具体的には食事管理、水分摂取量の増やすことなどです。

長々と書いてみましたが、ご参考になりましたでしょうか?尿管閉塞は起こると怖い病気ですし、知らぬ間に罹患していた、しているなんてこともあります。色々な面で厄介なものです。それゆえにかかりつけ医の存在は大事だと考えます。このような場合でもなんでも相談できる、治療方針を正しく一緒に決定することが出来る、そしてしっかりとしたレベルの医療をそこで受ける事が出来る、難しければきちんとしたところを紹介する。そんな病院・獣医師でありたいと思っています。

本年も宜しくお願い申し上げます。