麻酔をかけること

2021年02月19日

とんでもなく久し振りにブログを書いてみる余裕ができましたので、最近頻繁に話をするな〜というテーマについて書いてみようかと思います。

それは「麻酔をかけること」についてです。

当院は手術件数がとても多いようなので、必然的にこのテーマにはしょっちゅう出くわします。

手術をしたり、とても痛い処置をしたり、スケーリングをしたり、、、様々な場面で麻酔、特に全身麻酔は必要となります。

とても大切な処置の一つだと考えていますし、無くてはならないものです。

ただ、自分自身も思っていました&今でも思う事があります。

それは「麻酔=なんとなく恐い、危ない」というイメージ。

麻酔に関してよく聞かれる事についての自分なりの考えや答えを述べてみようと思います。大前提として、2つとして同じケースは無いので、一律に同じ答えをする事は無いですし、各々のケースについての最善を探すので、これしかないという事では無いので悪しからず。

Q:うちの子、高齢なんだけど麻酔して大丈夫?

A:高齢になる=老いという目に見えない要素が加わることは不確定要素の一つですが、一律に高齢だから麻酔が出来ないということはありません。よく聞くのは「15歳超えたら麻酔出来ないって聞いた」などですね。自分の中では年齢というもので一律に線を引くことはありません。若い子でも全身状態が悪ければ麻酔リスクが高いため、回避を推奨することもありますし、麻酔前に状態を上げてから臨みます。高齢でも全身状態が良好であればそこまで恐れすぎることも無いと考えています。

Q:全身状態を把握するには何をしたら良いの?

A:しっかりとした手術前検査を行って把握していきます。当院では6〜7歳を一つの目安として検査内容・種類を選択していきます。高齢の子の場合は血液検査、レントゲン検査、エコー検査、尿検査などを状態や基礎疾患の有無、前情報の有無によって行っていきます。時にはホルモン検査なども行っていくこともあります。若く、健康な子であれば血液検査のみの場合もあります。

Q:病院によって必要な内容が違うのはなぜ?

A:それはそれぞれの先生方のお考えに依るところが殆どだと思います。安全と引き換えにコストを追求する先生もいらっしゃると思いますし、コストを引き換えに安全を追求する先生もいらっしゃいます。その中間の先生、中には両立できる先生もいらっしゃると思います。どれが正しいかではありません。ある程度のガイドラインやモラルに則っていればその先は好き嫌いの話になると思います。

Q:高齢な子ほど検査が多くなるとコストがかかるよね?

A:高齢になる=老い=不確定要素、色々なことがより起こりうるという事です。我々もその不安に準備を整えたり、明確に答えられるように、解消できるようにするには一定以上の情報が必要です。そのためには必要な事だと思っています。コストを優先して安全を犠牲にする事は自分の考え方では是とはしていません。コストも大事な要素ですが、命が最も大切です。

Q:検査を他院で行い、その結果を術前検査として用いる事は可能ですか?

A:可能です。ただ、不足項目などある場合は追加で行う必要があるため、二度手間になる懸念があります。なるべくなら検査と処置は同じ病院内で行っていただくことがよろしいかと思います。

Q:結局の所、麻酔って恐いものなの?

A:決して恐い・危ないものでは無いと思いますが、その子の状態によっては危険なこともあります。ただ、然るべき準備や備えをしておけば安全に行えるものだと思います。車を運転したりするものと同じ感覚でしょうか。事故を起こそうと思って運転はしないし、決められたルールや免許を持って気をつけて運転をします。とはいえ、貰い事故や不測の事故が全くないとは言い切れないのも事実です。正しく怖がるということが大切なのでは無いかと思います。ですので、麻酔=危ないものという考えは違うと思います。

Q:スケーリングの際の麻酔で死んでしまった子がいるって聞いたんだけど?

A:何事にも絶対は無いですから、ありえない話では無いと思います。でもそれは決して多いことでは無く、然るべき準備や対応をしていればとてもレアケースだと思います。そのレアケース(回避出来ることであれば)にならないためにもきちんとした検査、準備、担当医と本当にその処置や手術、麻酔は必要なのかを相談していきましょう。

Q:先生に中々相談しにくいのだけど。。。

A:自分含めて先生達は何でも答えていきたいと思っているはずです。遠慮なく聞いたほうが良いでしょう。聞いてもきちんと答えられない先生であればそれは個人的には良い先生とは言えません。。。良い先生を頑張って探して下さい。合う合わないもあります。そのための診察であり、診察料です。受診する側にはしっかりと聞く権利があります。(人間同士なので聞き方は大事ですが、、、)

こんな感じでしょうか。正しく怖がるというのが簡単な様でとても難しいことだと常々感じています。

恐れすぎて機を逸してしまうようなことが無いように、かつミスリードにならないようにしっかりとしたインフォームを心がけていきたいですね。