猫パルボウイルス感染症その後

2018年05月02日

診察中に他の飼い主さんから「猫パルボ。その後大丈夫?」という質問を複数戴きました。また、区役所の衛生課の方とお話する機会が別件であったのですが、その際にも「出たの?」と聞かれました。意外にも色々な方にこの情報がお耳に届いているということで、少しでもパルボの蔓延の抑止に繋がれば幸いです。

その後についてですが、詳細は不明です。当院で診断・治療を行った子は残念ながら亡くなってしまいましたが、その子のお家には他にも複数の外に出るワクチン未接種の猫さんがいるとのことです。そして、その中には既に具合が著しく悪い子がいるとのことでした。その子もパルボかは不明ですが、十分有り得ることかと思います。病院からは猫さん達をお外に出さない事と、ワクチン未接種の子は体調に問題が無ければ直ちにワクチン接種を行う事、既に具合が悪い子は念の為隔離&必要に応じて治療・受診をするようにお伝えしました。しかし、その後は当院においてワクチン接種や診察を行っていませんので、どのように対応頂いたかは分かりません。収束したのか、はたまた全滅したのか、まだ続いているのか、亡くなった子はきちんと対応されているか(埋めたとかであればとてもマズいことです)。。。

ただ、確実に言えることとしては「猫パルボウイルス感染症は原則ワクチン接種で予防できるもの」ですので、自分の身は自分で守るという上できちんとワクチン接種を行っていれば家庭猫さんについては問題ないと思います。生涯未接種の子は接種させてあげましょう。ワクチンに関しては接種後の肉腫の発生のリスクなどが報告されていますが、事実パルボが発生している状況なら接種メリットが上回るでしょう。

接種間隔についても様々な意見がありますが、当院では1年毎の接種としております。しかし1年でピッタリと効果が切れる訳ではありませんので過去に接種歴があれば間が空いているのが1年くらいなら問題になることは少ないかと思います。長期に抗体が持続する個体なら数年持つケースもあるとされています。特に猫に関しては抗体の持続が長い事が多いようです。従って3年に1回の意見もありますが、ワクチンメーカーから言うと「日本でそれは危ない」との意見でした。理由としては「3年に1回の案はアメリカから出てきたもの。そして、アメリカの狂犬病や混合ワクチンの接種率が高いため、万が一感染症が発生しても蔓延はしない。3年に1回の間隔で接種した場合のリスクであるローレスポンダーについてもその環境ならローリスクである。一方日本のワクチン接種率は狂犬病ですら50%を切るとされており、混合ワクチンについてはそれよりも低い。これでは一度感染が発生すれば流行は防げない。そんな状況下で3年に1回接種案ばかりが先行するのは危険である」という事だそうです。犬のお話と猫のお話を混同してはいけませんが、このあたりはご自身の担当ドクターとの相談をお勧めします。当院では原則1年毎の接種&免疫疾患等で接種が推奨されない場合は抗体価の測定などを以て接種の可否を患者さん毎に決定しています。

話は戻りますが、今回のパルボ発生で懸念しているのは保護猫活動をされている方達の妨げになるのではないか?という事です。不妊処置を多数の野良猫さんにおいて行う環境下ですから、パルボのような感染力が強い感染症が蔓延している恐れがある地域で行うことはリスキーな一面もあると思います。恐らく現実的にはパルボに抵抗力がある子だけが生き延びるのだと思います。なのでその生き延びた子を再び数が増えないようにしていくという事になるでしょう。

何にせよ、猫さんは「外に出さない、予防はしっかりと、自分の身は自分で守る」これさえ守っていけばお家の子達は間違いなく安心です。