転倒にはご注意を

2017年08月31日

8月も早いもので今日でおしまいです。

今月はなぜか転院や重症症例がとても多く、本当に忙しかった当院でしたがスタッフさん達はとても良く頑張ってくれました。(認定医の取得と関係あるのか??)

さて、お家の中での事故、、、たくさんあります。例えば異物誤飲、転落、感電事故、ふんじゃったなどお外ほどではありませんが、気をつけないと事故は起こりえます。

特に小型犬のワンコさんで足裏の毛が伸びていたり、テンションが上がり過ぎてしまい、フローリングなどを滑りながら走り回ったりしていませんか?結構危険です。勢い余ってぶつかってしまったり、膝蓋骨脱臼を持っている子であれば過度なテンションがかかり痛み〜最悪靭帯断裂、足腰が弱くなってきている高齢犬では転倒。色々なトラブルに繋がります。

今回は「転倒」。シニアのトイプーさん。朝、テンションが上った所で転倒、物凄い声で鳴いてそのまま立てないとの事。

レントゲンを撮ったらこんな感じ。ABDOMEN LAT DOG T4

左股関節の完全脱臼を起こしています。かなり変位も強く、恐らく股関節腔内の円靭帯も断裂しているでしょう。関節包ももしかすると破れたりしているかもしれません。そうなると関節液が漏出して激しい炎症を引き起こします。股関節の脱臼の場合、徒手で整復することもありますが、円靭帯が断裂していればまず間違いなく再脱臼します。たまにサポーターなどでキープしている子を見かけますが、ほぼ無意味です。大体は外した直後に再脱臼します。サポーターでどれだけ安静にしても切れた靭帯は再生しませんのでルーズなままです。

今回の場合、まず再脱臼を起こすことが間違いないため、根本的な治療が必要とインフォーム。選択肢としては人工関節置換、ないしは大腿骨頭切除です。今回は後者を選択(前者を強く希望される場合は整形専門二次施設を紹介することになりますが、大変高価です。国産車買えるくらいです)。

関節液の漏出の可能性も考慮し、夜に緊急手術し骨頭切除を実施。やはり靭帯は完全断裂していて内科管理は無理(したとしても相当痛みを抱えながらの余生&固定による相当な生活の質の低下で動物愛護に関わるレベル)

術後直ぐから足を徐々につけるようになってきています。大体は5日程度で退院できるでしょう。

徐々に年齢を重ねると、イケると思った動きでも失敗したり上手く行かなくなることは人も動物さんも同じです。お家の中の環境整備や、全身カットをしないまでも足裏のバリカンやカットなどのメンテンナンスを行う事はとても大切なことです。爪の破損なんかも該当するでしょう。起こる可能性は低いことかもしれませんが、些細な配慮・努力で大きな事故を防ぐことができます。これは事故に限らず病気でも一緒です。それぞれの犬種や性格、ライフスタイルや年齢。。。その時その時に合わせて上手な管理・様子の見方をホームドクターと相談・共有することがとても大きなポイントです。

事故が起こってから、病気や具合が悪くなってからでは無く、その前の段階で早めの相談・受診が大切だと思います。最近の転院症例や重症例を見ていると動物病院には治療の側面と手軽に相談が出来るサポーターとしての側面がありますが、これらは普段からいかに病院と良好な関係を築けるかが肝だと改めて思います。

爪切って〜、肛門腺絞って〜、うちの子体重何キロ?、何とも無いと思うけど体触って〜、散歩のついでに寄りました〜なんでも良いと思います。当院は動物病院に来るという入り口を広くしたいと思い、爪切り・肛門腺・簡単な耳掃除くらいなら診察料の中に含んでいます。トリミングやホテルもその一環です。来ている患者さん全員が病院と顔なじみ。。。そんな関係性の中で診療が出来たらある意味素敵ですね。