認定医講習会に参加して

2018年10月16日

先週の日曜はスタッフにお任せして日本獣医皮膚科学会の認定医講習会に参加してきました。

日本獣医皮膚科学会認定医はなるのもそれなりに大変なのですが、取ったあとも結構頑張らないと維持できません。学会出席や発表、論文投稿、診療実績などなど3年間で一定のポイントを集めないと更新することが出来ません。他の学会認定医は学会&講習会出席だけで済むことが多い中で結構なハードルです。よく言えば皮膚科認定医を持っているということは勉強や研鑽をしてきただろうけどこれからも続けなさいというメッセージをもらっているものだと思っています。

さてその認定医講習会の中で3つのテーマがありました。その中でアレルギー疾患についての講義があり、具体的な数字や情報など飼い主様側が聞いても興味深いものがありましたのでそういった部分をピックアップして自身の健忘録代わりにざっくりまとめてみようかと思います。

  • アレルギーって?→有害な免疫反応。1〜4型が存在
  • そのアレルギーが原因として起こる皮膚炎は以下の通り
    1. ノミアレルギー性皮膚炎(FAD)
      • FADはノミの唾液中のタンパク質に対してのアレルギー
      • ノミアレルギーとノミ刺され(ノミ刺症)は違う。アレルギーは5歳以上(1歳未満はまずない)であることが多く、痒みが激しい。ノミ刺症はすべての年齢で起こり、痒みは寄生数に依存する
      • 症状は腰背部
      • 診断にはノミ糞の検出(出ないこともあり。痒くて舐め取るから?)、血清IgE検査(感度80%)、ノミ駆除による反応
      • 治療は痒みのコントロール、環境衛生、ノミ駆除
      • 駆虫は飲み薬で即効させる(30分〜3時間以内でほぼ死滅させられる)
    2. 通常疥癬
      • ヒゼンダニの虫体や糞に対してのアレルギー
      • 保持動物はアライグマが有名。都心ではハクビシンもありえそう。
      • 通常疥癬と角化型疥癬の2パターン。通常疥癬は少数寄生だが激しい痒み&90%で腹部や四肢に症状がでる。角化型は多数寄生で痒みが顕著でないこともある。
      • 人への一時寄生は38%でありと報告。疥癬と診断されて人間が痒くなれば皮膚科へGO。
      • 診断は病歴・掻爬検査(通常疥癬の場合3割程度と低い)、試験的駆虫による反応
      • 痒みの沈静化には虫体が消えるだけでは駄目。痒み止めを使い、収まるまでに2ヶ月くらいは見ておく。
      • 同居犬がいれば全てに治療。80%で同居動物への感染おこる。感染力強い。
    3. 食物アレルギー
      • 食物有害反応の一つ。
      • 主原因は牛肉34%、乳製品17%、鶏肉15%、小麦13%
      • 症状は様々
      • 確定診断には除去食試験(新奇蛋白・加水分解・家庭調理食)8週間でほぼ充分。その後負荷試験をすれば裏付け可
    4. 接触皮膚炎
      • 機序はアレルギー性・刺激性の2つ。どちらかの判断は難しい。アレルギー性は特定の犬で激しい痒み。刺激性はどの犬でも起こり得て用量依存性とされる
      • 毛のないところの起こりやすい
      • 診断は病歴、原因除去による改善&負荷による再発、パッチテスト
      • 多いのはシャンプー、植物、薬物
    5. アトピー性皮膚炎(AD)
      • 犬の場合の定義は遺伝的素因、環境アレルゲンに対するIgE産生、かゆみと炎症を伴うアレルギー性疾患。
      • 診断には類似疾患の除外(主に感染、食物やノミアレルギー)、病歴
      • 皮疹の分布は目周り・口周り・耳・四肢端、間・腋窩・尾根・内股など。犬種による分布の違いはありそうだ。フレブルさんとか。
      • 痒みがあって分布が合致していて、感染兆候がなく、慢性・反復性経過なら感度96%とも
      • アトピー性皮膚炎でも食物が悪化因子になることもありえる。アトピー=なんでも食べて大丈夫というわけではない。
      • 犬ADは遺伝的素因として
        • バリア機能異常:セラミドやフィラグリンの低下で保湿力ダウン。結果皮膚表面の常在菌の多様性低下しブドウ球菌やコリネバクテリウム属菌が上昇しやすい。結果膿皮症を起こしやすい。
        • 免疫学的異常:日本のAD犬はコナヒョウダニに対するIgE値が高くでる傾向。すなわちハウスダストに対しての高い血清IgE値はアトピー体質と理解。
      • 環境要因として
        • 抗原
        • 非特異刺激:脂漏体質・多汗・精神的要因・感染症→その子によってはシャンプーやスキンケアが有効な裏付け
      • 結果起こる皮膚炎に対して抗炎症薬・減感作療法
      • プロアクティブ療法は再発防止に有効。なにもしないと1ヶ月やると3ヶ月というデータあり。
    6. 蕁麻疹
      • 原因が不明な事が多い。虫刺され、薬物、食物
      • 24時間以内に消退し脱毛はしない

かなりコンパクトにまとめるとこんな感じでした。これはあくまでも一般論を書いたノートみたいなものです。書いていることがすべてでは無いこともあります。基本的に診断や治療はテーラーメードで行われることです。ただ、概略が分からないとピンとこないですよね。そのために端折って書いてみました。