ダイオードレーザー治療器導入しましたが。。。

2019年02月22日

レーザー治療器を新たに導入しました。

レーザー治療器には幾つかの種類がありますが、今回導入したのはダイオードレーザーと言われるタイプです。

この機器によって診療の幅が大きく広がります。例えば。。。

  1. 体表腫瘤の無麻酔での蒸散・切除(サイズや部位・状態によっては対応や推奨不可、複数回の通院が必要になる場合もあります)
  2. 熱損傷を最小限にしての切開(特に軟口蓋過長の手術が迅速・簡便に行えることにメリットを感じています)
  3. 疼痛緩和・創傷治癒の促進(血流改善などによって傷や骨折の治りを促進することが期待されます。また、関節炎やヘルニアなどの疼痛緩和にも効果が期待できます)

他にも歯周炎治療、腫瘍凝固、逆まつげ除去、緑内障に対しての毛様体凝固などなど。侵襲の少ない治療やより効果的な治療が展開できるようになりました。

ただ、気をつけることはこの機器で上記の疾患の治療が根底からひっくり返ったり、デメリットが全くなくなるといった上手い話はないという事です。例えばイボの蒸散であればイボは消えるかもしれませんが、

  • 火傷の跡みたいな傷が残るので処置後舐めないようにするなどの工夫が必要
  • 一度の処置では終わらないことも多い
  • 悪性であった場合、取り残しやそれに起因する再発や転移のリスク
  • 蒸散させてしまうため、病理組織学的診断が不可
  • 部位や性格によっては結局鎮静ないしは麻酔が必要

などが懸念として存在します。他の治療に関しても同様です。あくまでも治療の選択肢の一つ・オプションとして考える必要があります。緑内障でもレーザーで凝固すれば点眼が要らないとかではありません。原疾患があるならそれをコントロールする必要がありますし、点眼治療の方が勝るケースもあると思います。

レーザーを導入することで多く見かけることは、手術はしたくない、できない→レーザーがある病院だったらどうにかなるってネットで見た→持ってる病院を見つけた、やってくれというパターン。これは結構危うい考え方です。上記の理由などで結局はレーザーが適応じゃなかった場合には無駄足ですよね。これは実際に診てみないと分かりません。きちんとしたメリット・デメリットをご理解頂いてから実際にするかしないかを個別に判断していきます。

うちはレーザーがあるからイボを無麻酔でどんどん取ってあげますよ〜、よそで手術しないと駄目だって?レーザーがあるからウチなら手術なんて不要だよ〜という耳当たりの良い事を言うつもりはありません。きちんとした外科的切除も行いますし、抗がん剤だって使います。寧ろそちらをきちんとご提案することが第一です。ただ、持っていることで診療の幅は広がりますし、メリット・デメリットを理解した上であれば時に姑息的にレーザーを使っても良いと思います。持ってなければ話すら出来ません。でもそれは個別に判断することですし、安易な考えの場合は時にはレーザー治療は得策ではないですよとお伝えすることもあるかもしれません。従って繰り返しになりますが、当院でもあくまでも選択肢の一つとして考えているに過ぎないという事です。

じゃあなんでそんな微妙な位置づけの機器を導入したの?となりますが、ウチでは以下に価値を感じています。

  • オトスコープ使用時の耳道内病変への対応力アップ:レーザーはファイバーを使います。ファイバーは大変細いため、オトスコープシステムを通して使う事ができ、今まで引き抜くことでしか対応できなかった耳道内腫瘤や壁の肥厚を起こしている場合に対しより効果的に治療が行えるようになる。
  • 軟口蓋過長の切除時の手術時間の短縮・簡便化:当院は皮膚疾患に付随するためか短頭種も多く来院します。そのため、軟口蓋過長症の手術が早く簡便になることは大きいです。
  • 疼痛緩和・創傷治癒促進:ヘルニアなどの疼痛緩和は慢性的であることも少なくありません。鎮痛剤も大事ですが、慢性的な場合は飲み続けるのもあまり良いことでは無いので補助的な選択肢としてはとても有効です。温熱効果もあるので人間で言えば温泉浴みたいなものでしょうか。
  • 明らかな皮脂腺腫と思われるイボの蒸散:切る、根っこを縛って枯らすよりかは簡便に行えます。人間のイボ取りと同じです。

やはり一番は耳科診療の向上です。オトスコープシステムをより効率的に活用できるようになります。見る、摘むに加えて焼く、切り取ることができるようになったのは大きいと思います。個人的には肩こりがひどいので、レーザーで楽にならないかな〜試してみたいな〜なんて思っています。