皮膚のできもの

2019年02月05日

高齢になってくると見かけることが増えるのがイボ・出来物の類です。

診察の中でも相談を受ける事がよくあります。

皮膚のできものは他の組織と同じ様に様々な種類があります。そのアプローチについていくつかポイントを挙げてみようと思います。

・見た目だけで良いか悪いか判断できるとは限らない。

診察の中で出来物について相談をしたことがある方は少なく無いと思います。その時にひと目見て「あ〜、これは良性だよ、様子みて大丈夫だよ」と教えてもらった事はありませんか?皮膚の出来物の中には特徴的な見た目のものが存在します。例えば皮脂腺腫。良性の毛包付属器系の腫瘍ですが、カリフラワー状の見た目で、悪性であることも殆ど無いため、見た目だけで放置OKと判断されることが殆どです。例えば肥満細胞腫という悪性腫瘍。これは「偉大なる詐欺師」という称号がついています。要は様々な見た目を呈し、一見良性腫瘍の様に見えて実は。。。ということを招くことが多い故の呼び名です。特に肥満細胞腫は命に関わる状態を作りうる悪性腫瘍ですので、我々は少しでも怪しければ常に念頭に置いてアプローチする必要があります。

・出来物に対しての診断アプローチは?

他の皮膚疾患と同じです。見た目から鑑別リストを挙げること。次に細胞診を選択する事が殆どかと思います。細胞診は腫瘤に針を刺して中身を採取しどのような出来物か?を判断する検査です。細い針を使うので少ない痛みで安全に行うことができるのがメリットです。しかし、限界もあります。例えばゆで卵に細い針を刺した場合に黄身に刺さるかどうかは角度や刺し方によって変わってきます。また、とても硬いものであれば針にサンプルは入ってきません。その様な場合は検査エラーが生じる事になります。針生検は診断に即繋がることもあれば、繋がらずにアタリをつける程度にしかならない場合もあります。その場合は切除生検が必要になります。

・皮膚の出来物だからと言って皮膚だけの問題とは限らない。

あくまでも皮膚のできものが症状の一つに過ぎないケースもあります。考える鑑別リストによってはしっかりと身体検査〜血液・画像検査が必要になります。

・臨床的な良・悪と組織学的な良・悪が結びつかない場合もある。

例えば先にも出た皮脂腺腫。高齢のワンちゃんでよく認められるできものの一つです。カリフラワーの様なモコモコっとした外観を呈すことが多い良性の毛包付属器系の腫瘍です。良性であるので何か具合を悪くしたり、転移をしたりすることは無く、美容上の問題だけであるため大体は放置されるています。しかし、時に患部が増大していく中で気にして引っ掻いてしまう、傷つけてしまうなどの場合があります。発生した部位によっても問題を起こす事があります。その様な場合は組織学的には良性であっても臨床的には生活の質を落とすもの(悪いもの)と捉えて対応する必要があります。その場合は切除が推奨されます。

・イボの除去にレーザーは万能では無い。

出来物を除去する上では外科的な侵襲は不可避で、時に全身麻酔が必要となります。しかし、全身麻酔を懸念するお声もよく伺います。その際にレーザーなどで全身麻酔をかけずに除去することが出来る事があります。レーザーで除去する場合は最も多いのは蒸散・焼烙する事が多いかと思います。(ハイパーサーミアなどは今は置いておきます。)そのため、どの様なタイプにも使える訳ではありません。例えば粉瘤のように皮膚腫瘤ではあるが、皮内、皮下に発生するような腫瘤は蒸散することはできず、レーザーの適応ではありません。外側に突出しているような腫瘤で無くては使えません。また、肥満細胞腫などのように固着や皮内・皮下に足を伸ばすタイプの腫瘍の場合は明らかな取り残しに繋がります。問い合わせで「出来物があって取りたいけど麻酔は嫌だ。レーザーがあれば取れるって聞いたのでやってくれ」という事が多々ありますが、上記の場合等では対応できないという事になります。

最も大切なのは、その子の状態、背景、既往歴等によって診断アプローチや治療を考えることです。それには獣医師と飼い主様、動物さん達の三者の信頼関係や情報共有が大切になります。テーラーメイドで行う必要があります。2つとして同じものは無いというのが臨床の現場であり、医療だと思います。たかがイボ一つかもしれませんが、様々なケース・アプローチがあります。なんでも相談できるように我々は準備しています。気になることがあれば遠慮なくお気軽にお尋ね下さい。