減感作療法

2015年10月15日

最近は涼しくなってきましたね!

皮膚病の子達も少しはコントロールがしやすくなってきました。それでも痒みのコントロールが難しい子の相談は多い当院です。。。

さて、その中で今日は減感作療法について書いてみようと思います。

減感作療法は犬アトピー性皮膚炎の治療選択肢の1つであり、アレルギーの基となるアレルゲンを少しずつ投与することで免疫が過剰に反応しないように慣れさせる治療法です。人間では最近、スギ花粉症に対する減感作療法のお薬が保険適用になったように近年注目を集めている治療選択肢です。

犬アトピー性皮膚炎の治療は対症療法が多いですが、減感作療法は唯一の根治療法(語弊を恐れずに言うと体質改善)と期待される方法です。以前からも動物医療において減感作療法は一部施設でのみ行われており、私自身も大学病院での診療で実施していく中で効果のある治療法だと感じていましたが、頻回の注射やアレルゲンの入手の問題などで中々一般的ではありませんでした。しかし、最近になり一般病院でも実施しやすいような減感作療法のお薬が開発されました。

実施していく上では以下の事が必要です。

①犬アトピー性皮膚炎であり、感染のコントロールができていること

②Derf2という抗原に対してIgE抗体が陽性であるということ

治療プロトコールとしては、週に1回規定のアレルゲンを皮下注射し、徐々にその濃度を上げて行きます。全てのプロトコール完了まで合計6回の投与を行います。その後は治療の反応をみて終了ないしは適宜の注射(月1回であったり様々)を行うことが推奨されています。

費用としては事前検査が6000円、毎回の注射が6000円×6回の計42000円再診料、消費税別)になります。因みに、アトピー性皮膚炎の治療として用いられるシクロスポリンという大変良いお薬もありますが、こちらは5kgくらいの子で大体月に2,3万円程度かかり、減薬した場合でもその1/2〜1/3くらいのコストは掛かります。通院の手間さえ除けばほぼ同じコストで根治治療が出来ることは大きなメリットだと思います。

一方、減感作療法のデメリットは意図的にアレルゲンを投与するわけですから、まれに皮膚炎が悪化したりアナフィラキシーのリスクがありますが、これはとても少ないとされています。

実際の印象としては7割くらいの症例で明らかにステロイドやシクロスポリンの投与量が減らすことが出来たり、休薬が出来るようになっています。確かに全ての症例に効く訳ではありませんが、可能性をとても感じさせる治療法だと思います。他疾患などでステロイドを減薬・休薬をしないと行けない場合、そもそもステロイドは使いたくない、根治的な治療をしたい、投薬が難しいなどの場合はとても有用な選択肢だと思います。今後は注射ではなく、人間のように舌下減感作療法なども現れてくることも期待されています。

アトピー性皮膚炎には様々な治療選択肢があります。それぞれにメリットやデメリットがありますので、当院では細かくインフォームをさせていただいた上で治療法を飼い主様と一緒に模索・決定をしていきます。

止まらない痒みや難治性皮膚疾患場合など、お困りの場合は当院まで遠慮なくご相談下さいね。