耳のメンテナンス

2015年07月11日

一昨日までと打って変わって夏!!ですね。熱中症対策は万全にお願い致しますm(__)m

さて、診療の中でよく聞かれるもので多いのはやはり普段のメンテナンスです。その中でお耳のケアについての方法や何を使ったら良いのか?などをお話しましょう。皮膚を得意としている当院ですが、最近違う病気のお話ばかりでした。たまには簡単ですが皮膚話にお付き合い下さい。私自身、患者さんからの主訴で「痒み」と言われると燃えます!

まずは犬の耳の構造を理解しましょう。

これが耳(右耳)のイラストです。耳道はL字型をしており、耳介から垂直耳道〜水平耳道(外耳)と続き、鼓膜、その向こうに中耳〜内耳と続いていきます。内耳は聴神経と繋がり、脳へとつながっていきます。最もトラブルで多いのは外耳炎ですが、これは鼓膜よりも外側でのトラブルです。原因には感染やアレルギー、異物など様々です。アトピー性皮膚炎などにもよく併発する疾患です。

さて、メンテナンスの方法です。結論から言うと、耳垢が出ていなかったり臭いなどが無ければ基本はノーメンテナンスでOKです。ただ、垂れ耳の子や、外耳炎の既往歴のある子は定期的にチェックしてあげる必要があります。頻度は汚れの出方によりますが、1週間に1度くらいは軽く耳を覗いてあげましょう。

お家で出来ることは指の届く範囲内と割り切ることが必要です。耳道内にアプローチするために「こより」や綿棒を使うことが有りますが、これは耳垢を奥へと押しやるだけでなく、耳道表面を傷つけるので良くありません。耳道の表面は大変都合良く出来ており、耳垢は皮膚のターンオーバーと伴に外へ外へと排出されていきます。そのため、基本的には指の届く外側のみでOKということです。具体的にはガーゼやコットンにぬるま湯や耳道洗浄液を浸したもので軽く拭ってあげると良いでしょう。その際に耳の穴に向けて絞り込むようなイメージで吹いてあげましょう。すると耳道内に液が入ってくれますので、耳の付け根を揉んでなじませてあげましょう。その後、液が一定以上入っているとブルブルっと頭を振ってくれますので、それと伴に出てきた液&汚れを乾いたコットンなどで拭いてあげれば十分です。犬の首をふる力は強いですので、薬液が入っても振ることで耳介にまで出てくれますので、安心して下さい。注意点としてはこの方法は鼓膜がきちんと存在している場合で可能な方法です。重篤な外耳炎の場合は鼓膜が損傷していることもとても多いため、その場合は薬液が中耳・内耳へと入ることで毒性を示すものも在ります。痒みや赤みを伴っている場合、鼓膜の損傷が疑われう場合はきちんと獣医師に鼓膜の有無を含めて外耳処置として対応してもらう必要があります。

きちんと鼓膜が有りながらも定期的な処置が必要な子もいます。耳垢の出やすい子、少しの汚れでも刺激となって炎症を起こしてしまう子などなど。。。その場合は耳道内に洗浄液や耳垢溶解剤などを併用していきます。種類はとても沢山あり、当院でも多くの種類を持っています。写真はその一部です。

アメリカにはもっともっと沢山の点耳薬やこのような洗浄液や溶解液があります。入っている成分が微妙に異なるため、目的や用途、中には使いやすさなどの好みでチョイスしていきます。私自身が特にお勧めしているのは一番左の「ザイマックスイヤープロテクター」です!これは耳垢溶解液ですが、外耳炎の治療やその後のメンテナンスにすごい威力を発揮します。点耳薬との併用で良い成績を挙げています。大学でもこのコンビネーションはよく処方しますが、感触は良いです。これを使うと汚れが増えた印象を持つ方がいますが、これは中の汚れがよく排出出来ているということなのです。それぐらい優秀です。外耳炎治療としての点耳薬との併用は他所の先生にも教えたくないくらいです(笑)洗浄液としては最近注目されているのはTris−EDTAの入ったタイプです。こちらも耳垢を溶解&洗浄するにはかなり優秀な印象です。ある程度の抗菌活性や抗菌薬の効きを高める側面もあります。もちろん普段使いとしてもOKです。当院でよく使うのは左から3番目のエピオティックです。これはTrisクラスに耳垢がよく溶解できるのと外耳炎の場合、臭いが気になることが多いですが、それもケアできるのが良いと思って使っています。鼓膜がない場合は止むを得ず生理食塩水を用いています。

おまけですが、耳のメンテナンスということで聞かれることは「耳毛の処理について」です。これはケースバイケースだと考えています。耳毛は外からの異物を防御するバリアの側面もあれば耳道内を蒸らしたり、感染を助長させることもあります。外耳炎で来院される子の中にはトリミングやシャンプーで耳毛処置をしてもらった後の外耳炎も少なくありません。自分のすね毛を無理矢理抜いてみればヒリヒリしますよね?それと同じです。耳毛に耳垢が著しく付着していたり、耳道内の環境を整えることが優先される場合は処置として行うべきですが、美容目的ですと外耳炎誘発のリスクがありますので注意が必要です。抜いたあとは頓服的に外用を塗布してあげるなどの工夫すると良いでしょう。

外耳処置には近年、全身麻酔下で耳道内を洗浄していく方法や内視鏡が存在しています。治療が長期化することもあるため、この処置の必要性を私自身も感じています。なるべく早期にこの機器の導入をしたいくらいです。今回はメンテナンスのお話ですので、ここから先は割愛します(笑)

たかが耳かもしれませんが、されど耳です。外耳炎もひどくなれば中耳・内耳炎へ進行し、最悪脳炎なども引き起こすことや手術が必要なケースもあります。お家でのメンテナンスでひどくすることも逆に良くすることもできますので是非正しい方法や道具の使い方を知ってい頂きたいと思います。ご不明な事があれば診察の中で遠慮無く聞いて下さいね。些細なことでもお答えしていきたいと思っています。スッキリした顔で皆様がおうちに戻れるよう努めていきます!